シャープ増資と株価低迷の理由

シャープはアベノミクスで、たまたま業績回復と増資に成功しました。シャープの株価が低迷しているのは、増資により株数が増えたこともありますが、財務悪化要因で再度の増資が見込まれるからですね。

(1)シャープの財務状況

シャープは経営再建を継続していますが、資金繰りで問題が発生している理由は、格付けの悪化により社債発行やコマーシャルペーパーの発行が困難であることですね。シャープの財務戦略は、格下げでほとんど何もできないため、経営改善とアベノミクスによる株高で増資に成功したラッキーと言うことができます。

シャープは増資による新規投資を強調していましたが、資金繰りを考えると、現金が新規投資に向けられるのかもしれません。シャープの会計上の数値を見ると、増資による資本増強は別の要因により、資本が減少することで不安定な状況が継続することになります。

(2)シャープの増資と株価下落圧力

  1. 2013年11月12日 1265億円の増資が完了
  2. 2013年9月末 自己資本比率6.4%
  3. 2013年11月増資後 自己資本比率12%程度
シャープは2013年10月に増資を実施しており、11月に資金の払込みが完了しています。シャープの自己資本比率は1桁となっており、昨年度と同じような業績悪化が続いた場合、債務超過が目前となっていました。

シャープは債務超過を防ぐために増資を行っており、アベノミクスによる株式市場の上昇で、株式発行の環境が改善していたため資金調達に成功しています。シャープは株価が低迷していますが、増資をきっかけに株価が上昇している会社もありますので、株価低迷の理由は別のところにあると言えます。

(3)年金債務の計上で増資分が会計上消滅

  1. 2013年11月12日 1265億円の増資が完了
  2. 2014年3月期 企業年金の積立不足 約1200億円を一括計上
  3. 2014年3月期 シャープの自己資本比率が1桁に再度の下落
シャープ資本 増資の真相は年金債務について、2013年1月10日にまとめていますが、シャープは増資がなければ自己資本比率が2%や3%という倒産寸前の状況でした。シャープが年金債務で、自己資本比率が低下することはすでに市場の想定範囲であったということが分かります。


シャープの増資金額と年金債務の金額を比較すると、現金は手元に残りますが、会計上は増資した資本が年金債務引当金の計上で、そのまま消滅することが分かります。シャープは、低資本に戻りますので、株価は再度の増資を警戒することが十分に考えることができますね。

(4)増資を懸念して株価上昇が停滞している可能性

  1. 社債の発行 20%前後の自己資本比率が必要
  2. 社債の発行 格付けの格上げが必要
  3. シャープの利益は年間数百億円程度
シャープが資金繰りを改善するためには、手元資金が少ないため、社債の発行などが不可欠になります。シャープは現状の格付けが低いうえに、自己資本比率が1桁前後の水準では、社債の発行は事実上、不可能になっていますね。

シャープは2年間で1兆円近くの赤字を計上していますが、それ以前でも数百億円程度の利益となっています。シャープが社債を発行しようとすれば、数年間は黒字を継続しなければ厳しいため、増資によるさらなる株式希薄化を見越して株価が低迷している可能性がありますね。

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