鴻海テレビ製造販売 シャープに影響

鴻海が液晶テレビの製造販売に本格的に乗り出すようです。 鴻海は、シャープの旧堺工場の液晶パネルを使用するようですが、シャープには出資による利益とライバル企業の登場という二つの影響を受けそうです。

(1)鴻海が自社製品の生産と販売

台湾で60型液晶テレビ発売

鴻海(ホンハイ)が、テレビ事業に進出することについて2013年1月15日の日経新聞5面が、鴻海の事業の抱える問題点とともに報じているので見てみましょう。
家電製品などの受託生産で世界最大手、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業が自社製品の生産・販売に乗り出す。このほど台湾の傘下の家電量販店で60型の液晶テレビを発売した。
鴻海は受託生産の世界最大の企業として有名ですが、受託生産のため、今まで黒子役に徹してきました。テレビは家電の王様と言われてきましたが、鴻海が自社製品を本格的に売り出すと言う事は、受託生産に徹してきたビジネスモデルが一歩踏み出すことになります。

受託生産の利益率が低下

米家電量販大手のラジオシャックとも提携、中国大陸で合弁店舗を増やして拡販する。中国の人件費上昇を受けて受託生産の利益率が低下しており、事業モデルを一部修正して成長を目指す。
鴻海がテレビ販売を行う理由として、ビジネスモデルである受託生産の利益率低下が指摘されています。受託生産は、ブランド力が求められるわけではないですので、安く・早く・柔軟な生産が求められると思います。

鴻海の受託生産は、多品種を安く大量に作ることですので、主力向上のある中国の人件費上昇の影響を受けているようですね。

家電の自社生産や販売は初めて

鴻海はこれまで最大の顧客である米アップルのスマートフォン(スマホ)などの受託生産に特化していた。今後は中国などに自前で築いた小売網で自社製品を販売する事業も展開する。家電を自社生産・販売するのは初めて
鴻海は家電の自社生産や販売は初めてであり、従来の鴻海のビジネスモデルとは異なる事が分かります。アップルのスマホは、ブランド力が高いので、鴻海は大量に生産しても在庫リスクはなかったと思います。鴻海が自社販売を行うのであれば、製品の在庫リスクや販売不調のりすくなどを新たに背負う事になります。

(2)シャープやソニーなど日本企業のライバルに

当初の規模は小さいが、本格展開すればソニーやシャープなど受託生産の顧客である日本の大手の強力なライバルになる可能性がある。
鴻海は大手テレビメーカーから、生産を受託してますので生産ノウハウは、世界トップクラスでしょう。消費者の中には、テレビに対してブランド力ではなく、価格を求める人が増えているのではないでしょうか。

後述しますが、鴻海が販売する大型液晶テレビは、シャープの堺工場の液晶パネルを用いるようですね。半導体は何を用いるのか不明ですが、買えばいいので問題ないのでしょう。

(3)主力工場の人件費が3倍に増加

鴻海の受託生産の拠点である中国では、例えば主力工場がある深圳市の最低賃金が10年間で3倍になるなど、人件費が急上昇し、採算が悪化。安価な労働力に頼る受託生産の成長モデルが限界に近付いていた。自社製品の生産・販売事業を新たな収益源に育てる。
鴻海が、液晶テレビ販売に乗り出す背景について指摘があります。鴻海は多品種多量生産を行い、薄利多売を行っていますので、人件費が3倍になると利益を圧迫しているのでしょう。

日本企業が、コスト削減のために人件費の安い中国進出が言われてきましたが、最早、過去のものになりつつあるということでしょうか。

(4)液晶テレビはモジュール化で製造が容易

液晶テレビは部品さえ調達できれば製品化は容易で参入障壁が下がっている。鴻海はシャープと共同運営する堺ディスプレイプロダクト(SDP、堺市)の液晶パネルを使用。2013年は中国などでも生産・販売し、12万~15万台を出荷する見込み。4月をメドに70型も発売する方針だ。
液晶テレビは、モジュール化が進展していると言われています。これは、主要な材料さえあれば誰でも組み立てられるうえに、材料も入手しやすくなっていることを意味しています。

シャープのテレビ事業をホンハイが再建しましたが、この液晶パネルが使用されるようです。シャープ堺工場(現在はSDP)は、ホンハイが出資後、工場の稼働率が急速に回復しいます。

大型液晶パネルの生産に強みを持っていますので、ホンハイが70型の液晶パネルを販売するのであれば、その力を発揮するのではないでしょうか。

鴻海のテレビ製造販売に、堺工場の液晶パネルが使われるのであれば、シャープには業績改善とともにライバルの出現で影響を受ける可能性があります。(続く)

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